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2006年12月19日
(10)タン・モリ金属とヘラ絞り成形加工の現状
タングステン・モリブデンは高融点金属の中でも他の金属元素との間に固溶度が低く、合金化し難い金属であることから、低融点、高融点金属及び化合物金属の溶解ルツボ、蒸着ボート等の成形製品材等に適することは良く知られている。これらの製品の内、小型の成形製品は半自動型プレス深絞り加工(deep drawing)及びCNCヘラ絞り(spinning)機械により成形され大量生産されているが、最近、酸化物、窒化物などの大型単結晶の製造用のために肉厚のある大型タン・モリ坩堝等の要求が増してきている。これらの成形製品を作製する加工法の一つとしてヘラ絞り加工がある。
回転加工技術の一つであるヘラ絞り成形加工は言うまでも無く、1)素材とヘラまたはロールの接触面積が小さく、材料に与える応力は局部変形の繰り返しのため非常に小さい。2)成形型だけで製品形状が得られるばかりでなく型交換が容易である。3)繰り返し加工のため、表面仕上げは良く、表面に連続した加工繊維組織が得られるので成形製品の靭性が増す。4)切削加工に比べ、切り粉が出ないので素材の歩留まりが高く、材料費の節減ができる。5)加工方法が簡単であるため、設備費が少ないなどの利点ある。上記のような利点があるため金属材料の成形には今日でもヘラ絞り加工法が重宝されている由縁である。しかし、このヘラ絞り成形加工は技法自体が容易であるが故に技術的には未だ熟練と五感を要する成形加工法である。特に、高硬度・難加工材であるタン・モリ金属及びこれらの合金材料の成形は、素材の金属学的な特性の理解と熟練された技術及加工条件が合致して初めて高い精度を有する成形加工製品を製作できる。タン・モリ金属の場合、塑性変形学的にはコラム(6)の「タン・モリ金属と深絞り成形」で述べたように素材の金属学的特性として深絞り加工性の良い材料特性(n値、γ値、金相組織<変形粒径、セル形状など>、集合組織など)がヘラ絞り加工においても要求される。しかしながら,ヘラ絞り加工の特徴は塑性変形機構の立場から考えると、局部変形と歪み速度が小さいことに起因して、深絞り加工に比べ成形形状には制限があるもののタン・モリ金属のような難加工性材料の大型成形品の加工には適していると考えられる。事実、タン・モリ金属を難加工材にしている再結晶粒界を有するTEM,MLR,MLCの再結晶材においても成形加工が容易であり、結晶粒界の脆弱性を克服したヘラ絞り加工も可能である。このように、タン・モリ金属及び合金のヘラ絞り成形加工は薄板、厚板加工素材及び再結晶素材の材質制御を厳密に行うと共に金属学的特性を理解した加工条件を確立すれば可能であり、事実、肉厚10mm以上の底の深い大型坩堝までが容易に成形されているのが現状である。
投稿者 sunric : 2006年12月19日 16:13