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2006年3月 7日

(8)タン・モリ金属と加工集合組織(制御)

金属が結晶であり、ある特定の結晶構造を持つ固体である場合、結晶方位により、機械的、物理的・化学的特性が異なり結晶異方性がある。一般に金属の凝固、加工(塑性加工)、熱処理(再結晶)後の結晶粒の配向はランダムではなく、ある種の配向性(優先方位)をもった多結晶体となる。このように結晶粒方位の配向性を持った多結晶体のことを金属学的には集合組織を有する材料という。このような材料では、上記した機械的特性などは単結晶材料のもつ異方性に類似した特性として現れる。また、加工(塑性変形)工程で発達した結晶粒の配向を加工集合組織、再結晶後発達した結晶粒の配向を再結晶集合組織と言う。特に鉄合金・鉄鋼材料の一分野ではこの集合組織の発達機構のみならず実用的な制御方法の研究開発を長年に渡り行い、特に再結晶集合組織の持つ異方性と材料の持つ特性を最大限に引き伸ばしてきている。たとえば、自動車鋼板のプレス成形加工性の向上({111})、トランス材料のケイ素鋼の高磁束密度方向性({110}<001>)の向上などがある。
 しかしながら、純タングステン・モリブデン金属はコラム1コラム2で述べたように再結晶後に成形加工することは殆ど無く、板、棒、線材は圧延、転打、線引き後の加工後、すなわち、加工集合組織状態で成形加工することが一般的である。したがって、これらの材料の成形加工性の向上を高めるためには、加工集合組織を制御しなければならない。例えば、圧延によるタン・モリ金属の板材の場合、bcc金属(体心立方格子)の典型的な加工集合組織である圧延面と圧延方向に平行な結晶面{hkl}と結晶方位として、非常に強い{100}<110>、弱い{112}<110>と{111<112>の三つの圧延安定方位成分が発達する。これらの方位成分の内、特に{100}<110>成分はストレート圧延(一方向圧延)、クロス圧延(交差圧延)などの圧延方法によらず常に優先方位として発達する。したがって、コラム6で述べたように深絞りなどの成形加工には適さない集合組織である。成形加工性に優れた集合組織としては{111}に制御する必要があるがタン・モリ金属の場合極めて困難な現状にある。しかし、圧延加工による{111}方位成分の発達成因機構から、母材の初期結晶粒径(加工前の素材の粒径)の細粒化と何らかの微細な不純物粒子を分散させることにより加工集合組織として{111}の発達が可能であろうと考えられている。
事実、モリブデンの合金(例えば、TZM合金、分散強化型合金)などは圧延加工集合組織として、{111}成分が発達する。当社は、常に素材の加工集合組織および金属組織を考慮して成形部品を製作している。

投稿者 sunric : 2006年3月 7日 14:49