« (8)タン・モリ金属と加工集合組織(制御) | メイン | (10)タン・モリ金属とヘラ絞り成形加工の現状 »
2006年3月14日
(9)高融点金属とH,C,N,Oガス(侵入型元素)の挙動
高融点金属を扱っている当社にはよく顧客から「タン・モリ金属(周期律表VIa族)およびタンタル・ニオブ金属(Va族)材料を成形中および使用中に“クラック”が発生したがなぜか」という質問がよくある。前者は再結晶による“ 粒界脆化”、後者は“ 水素脆性”による破壊現象として一般には説明できことが多い。これらの破壊現象は直接的、間接的に成形および使用時の雰囲気状態が関与している場合がある。
本コラムではVa族とVIa族を対象に侵入型元素の H,C,N,Oガスの挙動と機械的性質について外観してみよう。Va族とVIa族金属の決定的な相違は侵入型元素の溶け込む度合い( 固溶度)である。Va族はVIa族に比べ非常に大きい。
まず、一般に金属中の水素〈H〉は固溶状態か 水素化物を形成する。W,Moでは水素の固溶度は小さく水素化物は形成しないが温度上昇と共に固溶度は増す。一方、Ta,Nbでは水素の固溶度は著しく大きく、ある温度以下では水素化物を形成しやすく温度上昇と共に固溶度は減ずる。したがって、W,Mo金属では水素による延性・脆性遷移温度現象および粒界脆性現象などは殆ど生じないが、Ta,Nbにおいてはこれらの現象に対して著しい影響をもたらすと共に機械的特性を大きく悪化させる。さらに水素のTa,Nb金属への溶解・吸収では発熱反応型の溶解挙動を示すために“水素脆化”の原因となる。
次に、C,N,Oに関して、Ta,Nb金属はこれらの元素の固溶度が大きく、室温付近の強度を著しく高め、伸び〈延性〉を低下させる。また、これらの侵入型元素が100ppmを越えると延性・脆性遷移温度を上げると同時に非常に硬化し、室温における深絞り成形加工等は不可能になる。一方、W,Mo金属はこれらの侵入型元素の固溶度は非常に小さいが、数ppmで脆性・延性遷移温度を上げると共に著しく延性を低下させる。また、高温時の粒界の劣化(粒界脆化)は結晶粒間に微量に存在する酸化物、炭化物によっても引き起こされると考えられている。
投稿者 sunric : 2006年3月14日 14:38