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2006年2月10日

(6)タン・モリ金属とプレス深絞り成形

 金属材料の量産部品の製造にはプレス成形は欠かせない技術の一つである。近年、無機物・有機物・化合物などの溶解、蒸着、焼成に用いられる坩堝・ボート・皿など、また、各種電子機器部品などにタン・モリ金属の深絞り成形品が広範に使用されている。金属のプレス深絞り成形には作業技術・金型はもとより金属素材それ自身の深絞り性のよい材料特性が要求される。一般に金属学的には引っ張り試験から導かれる加工硬化指数(n値)、塑性歪比(γ値)が高いほど深絞り性に優れているといわれている。要するに板材の場合、板面方向に強さ・伸びの異方性が小さく、十分な延性を示す材料でなければならない。このため、鉄鋼材料に見られるように、板面方向に伸びの異方性を少なくするために(ある意味でγ値を高める)再結晶(多結晶)組織の結晶方位を制御(再結晶集合組織制御)する研究開発が長年行われ深絞り性の向上を計ってきた。この結果、板面に{111}結晶方位、板面方向にランダムな結晶方位(<hkl>)を多く存在するパンケーキ状の再結晶集合組織({111}<hkl>)が深絞り性を高めるとされ、この集合組織を深絞り容易方向とされている。一方、深絞り難易方向の集合組織は{100}<hkl>であるとされている。
しかしながら、タン・モリ金属はコラム(1)コラム(3)述べたように多くの金属材料と異なり結晶粒界が極めて脆いため、加工状態より伸びのある多結晶(再結晶)状態では深絞り成形は困難であることは言うまでもない。また、鉄鋼材料のように再結晶集合組織を制御する意味がない。したがって、コラム2に述べたようにタン・モリ金属はプレス深絞り成形に限らず成形加工は加工組織を有する素材で行われている。板材の深絞り成形は一般に圧延材を用いているが、この圧延加工組織の優先方位は圧延面に{001}、圧延方向に<110>方位を有する深絞り難易方向を示す圧延集合組織からなっている。また、伸びもモリブデンでは最大15%以下であり、板面の異方性も大きく、深絞りには極めて悪い特性を有している。そこで、著者らはタン・モリ金属の場合、圧延組織のセル組織を圧延方法により(たとえばクロス圧延(交差圧延)の導入)、セル粒の粒径と形状を制御し、また、熱処理によるサブグレーンの制御よって深絞り性の向上が計られることを提案して来ている。現在では、当社のみならずタン・モリ金属の深絞り成形に携わる企業では十分な加工組織を制御した材料を用いることにより、複雑で微細な部品をプレス深絞り成形によって製作している。

投稿者 sunric : 2006年2月10日 10:43