« (2)成形加工と肌荒れ現象 | メイン | (4)再結晶粒組織の制御とタン・モリ金属の強靭化 »
2006年1月19日
(3)再結晶挙動と大型単結晶材料
タングステン、モリブデン金属は多くの優れた金属学的特性を有するにもかかわらず、多結晶状態では結晶粒界が本質的に弱いばかりでなく "脆化" (粒界脆性)言う致命的な欠点がある。これらの金属材料の粒界脆性の問題は機械的性質の観点から見ると、延性―脆性の遷移温度が室温付近にあるため鋳塊、再結晶材および溶接材では室温で落としただけでも容易に粒界割れを生じることにある。このことがこれらの材料の広範囲の実用化のみならず機能および構造材料部品の製造技術を制約している最も基本的な原因となっている。このため"粒界の強化"として長年に渡りカーボン、ボロンの添加、あるいは合金化などの研究開発が進められたが、これといった改善がなされなかった。これに対して、1980代の後半から90年代に渡り著者らにより脆さの原因である結晶粒界をなくす単結晶化に注目し、2次再結晶法による任意形状を有する大型単結晶化技術が開発された。
一般に金属を鍛造、圧延、転打などにより強い2次加工をした後、高温で加熱すると(焼鈍)、コラム(1)で述べたように多くの結晶粒からなる多結晶体(1次再結晶)になる。この多結晶体をさらに高温まで加熱(モリブデンでは約1800℃、タングステンでは約2200℃以上)すると多結晶体の中のいくつかの結晶粒が周辺の結晶粒を食って優先的に成長し(優先再結晶粒)、粗大粒からなる多結晶体になる。この際、金属に微量の添加物を導入しり、加工率、加工方法を制御した素材を高温下で焼鈍すると、上記述べた優先再結晶粒の一つの結晶粒のみが周辺結晶粒を食って異常に成長することがある(異常結晶粒成長、2次再結晶現象)。この結果、素材自体が一つの結晶粒で覆われた単結晶材料になる。
上記のタングステン、モリブデン大型単結晶製造法はこの2次再結晶法を応用したものである。 この方法の特徴は従来の歪焼鈍法、帯溶融法などによる単結晶化技術のように大きさ、形状、時間などの制約を受けることなく、棒材、各種板材、パイプ材などの任意形状の大型単結晶材料が可能である。 また、単結晶材料は多結晶材料の金属学的特性の欠如を補う分野に高機能性材料として応用されつつある。
投稿者 sunric : 2006年1月19日 10:13