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2006年1月26日
(4)再結晶粒組織の制御とタン・モリ金属の強靭化
タングステン、モリブデン金属は、鉄および鉄鋼材料をはじめとする多くの金属材料と異なり、多結晶状態(再結晶材)では結晶粒界が極めて脆いという致命的な欠陥がある。このことがタン・モリ金属の成形加工製作者を悩まし、タン・モリ金属研究者たちが"粒界脆性機構および強化"に関する研究開発を長年に渡り行って来たゆえんであることをコラム(1)、コラム(3)で述べた。特に、1980年代後半から1990年代前半にかけ"粒界の強靭化"を柱に再結晶粒組織の制御という基盤に立ち再結晶粒形状を制御した結晶粒長大化によるタン・モリ金属の強靭化研究が推進された。これらの強靭化研究は歴史的には1910年代に開発された電球のタングステンフィラメント(WにAl-K-Si酸化物を微量添加した合金)などの各種線材(WにThO2を微量添加した合金など)に見られる"酸化物分散強化型合金"開発の延長線上にある。上記のタン・モリ金属の結晶粒長大化による強靭化には母材と反応せず、熱的に安定な希土類酸化物粒子を微量分散させ、強加工と高温焼鈍による再結晶挙動を利用して再結晶粒の長大化を計ったものである。これまで国内外のタン・モリ研究・技術者による精力的な技術開発の結果、現在、純タン・モリ材料を除いてこれに変わるタン・モリ合金として"ランタン分散型強化合金"材料が注目されている。特にモリブデン金属の場合、純モリブデンに比べて再結晶後においても曲げ、ヘラ絞り成形加工が可能であり、溶接後も十分な延性が保たれるばかりでなく、低温延性、高温強度、高温垂下特性を著しく改善している材料としてタン・モリ金属市場で脚光を浴びている。商品名として、モリブデン材料の場合、TEM材(アライドマテリアルKK),MLR材(プランゼーKK)、MLC材(スタルクKK)の名称で製造されている。当社は本材料の金属学的特性を十分理解することはもとより、高温炉材および耐熱部品材料への適用を検討して成形加工部品を製造している。
投稿者 sunric : 14:09
2006年1月19日
(3)再結晶挙動と大型単結晶材料
タングステン、モリブデン金属は多くの優れた金属学的特性を有するにもかかわらず、多結晶状態では結晶粒界が本質的に弱いばかりでなく "脆化" (粒界脆性)言う致命的な欠点がある。これらの金属材料の粒界脆性の問題は機械的性質の観点から見ると、延性―脆性の遷移温度が室温付近にあるため鋳塊、再結晶材および溶接材では室温で落としただけでも容易に粒界割れを生じることにある。このことがこれらの材料の広範囲の実用化のみならず機能および構造材料部品の製造技術を制約している最も基本的な原因となっている。このため"粒界の強化"として長年に渡りカーボン、ボロンの添加、あるいは合金化などの研究開発が進められたが、これといった改善がなされなかった。これに対して、1980代の後半から90年代に渡り著者らにより脆さの原因である結晶粒界をなくす単結晶化に注目し、2次再結晶法による任意形状を有する大型単結晶化技術が開発された。
一般に金属を鍛造、圧延、転打などにより強い2次加工をした後、高温で加熱すると(焼鈍)、コラム(1)で述べたように多くの結晶粒からなる多結晶体(1次再結晶)になる。この多結晶体をさらに高温まで加熱(モリブデンでは約1800℃、タングステンでは約2200℃以上)すると多結晶体の中のいくつかの結晶粒が周辺の結晶粒を食って優先的に成長し(優先再結晶粒)、粗大粒からなる多結晶体になる。この際、金属に微量の添加物を導入しり、加工率、加工方法を制御した素材を高温下で焼鈍すると、上記述べた優先再結晶粒の一つの結晶粒のみが周辺結晶粒を食って異常に成長することがある(異常結晶粒成長、2次再結晶現象)。この結果、素材自体が一つの結晶粒で覆われた単結晶材料になる。
上記のタングステン、モリブデン大型単結晶製造法はこの2次再結晶法を応用したものである。 この方法の特徴は従来の歪焼鈍法、帯溶融法などによる単結晶化技術のように大きさ、形状、時間などの制約を受けることなく、棒材、各種板材、パイプ材などの任意形状の大型単結晶材料が可能である。 また、単結晶材料は多結晶材料の金属学的特性の欠如を補う分野に高機能性材料として応用されつつある。
投稿者 sunric : 10:13
(2)成形加工と肌荒れ現象
純金属の再結晶後の板、棒、線材等を曲げ、絞り加工などをすると、成形加工後の製品表面に変形粒の微小凹凸で覆われた肌荒れ現象がよく生じる。製品に美観を損ねるばかりで無く外観品質の良し悪しに影響することがよくある。この現象は鋼の薄板の成形加工後に見られるリジング、ローピング現象、また鋼の加工・再結晶焼鈍後、粗大結晶粒間の結晶方位差による表面上の微小凹凸として認識される肌荒れ(オレンジピール)とはミクロ的には異にするものであるが、マクロ的には再結晶組織状態(集合組織、結晶粒径、結晶粒形状)に起因して生じる現象と言える。
ところで、当社で扱っているタングステン、モリブデン金属は、鉄および鉄鋼材料をはじめとする多くの金属材料と異なりコラム(1)で述べたように、再結晶後ではむしろ成形加工が出来難い金属である。したがって、上記金属の成形加工は再結晶組織状態にある素材を成形加工することは殆ど無く、加工組織状態で成形加工を施しているため成形後の製品に肌荒れ現象を示すことは極めて少ないが、熱間加工後の厚板、太棒には加工変形粒径に依存して認められる。しかしながら、タンタル金属は再結晶状態で一般に素材提供されるため、この金属の成形加工後では写真1に示されるように再結晶粒径に依存した肌荒れ現象が明白に認められる。
当社はこのような成形加工と肌荒れ現象の金属学的な挙動を理解すると共に素材の材質
制御を厳密に行い、曲げ、絞り(プレス、ヘラ)成形加工時に発生する肌荒れ現象を克服して、超精密な成形加工製品を創製している。

投稿者 sunric : 10:09